年金「脱退一時金」の永住申請への影響について
日本で長く働き、将来は永住権(永住許可)を取りたいと考えている外国人の方にとって、大切なのが「年金」の問題です。(永住権に関しては、「永住者」の在留資格㉗(2026年最新)の記事で詳しくご説明しています)
今回は、帰国時にまとまったお金が戻ってくる「年金脱退一時金」の制度と、それが永住申請に与える悪影響についてなど、以下の4つの項目で解説します。
- 年金の「脱退一時金」とは何か
- 最大の落とし穴:「居住期間」がゼロにリセットされる
- その他の永住審査への不利益
- まとめ
まず最初に年金の「脱退一時金」についてご説明します。
<年金の「脱退一時金」とは何か>
日本の会社で働いていると、毎月のお給料から厚生年金が天引きされます。外国人の方が将来母国へ帰る際、「これまで払った年金が掛け捨てになるのはもったいない」ということで、日本を出国した後に手続きをすれば、払った期間に応じてまとまったお金が返ってくる制度があります。これが「脱退一時金」です。
完全に帰国して母国で暮らす方にとっては非常にありがたい制度ですが、「一時的に母国へ帰り、また日本に戻ってきて、将来的には永住権を取りたい」と考えている方にとっては、絶対に知っておくべき重要なことがあります。
永住権の取得をお考えの方に必ず知っておいていただきたいことを以下でご説明します。
<最大の落とし穴:「居住期間」がゼロにリセットされる>
例えば、現在「技術・人文知識・国際業務」のビザで10年以上日本に住んでいて、収入や税金の支払いにも全く問題がない外国人の方がいるとします。この方が一度日本を離れる際に脱退一時金を受け取るためには、原則として住民票を抜き、持っているビザ(在留資格)を返納して「単純出国」をする必要があります。
ここで最も注意しなければならないのが、単純出国をした時点で、日本に「引き続き住んでいる」という永住の居住条件が完全に途切れてしまうという事実です。
その後、再び日本に戻ってきて新しい就労ビザを取り直したとしても、過去の10年間の居住実績はゼロにリセットされています。つまり再入国したその日から、また新たに「10年間(そのうち5年は就労)」住み続けないと、永住申請自体ができない状況になってしまうのです。
上記以外にも注意点がありますので、ご説明します。
<その他の永住審査への不利益>
居住期間がリセットされることだけでも厳しいですが、仮にそこから10年やり直して申請したとしても、脱退一時金を受け取った過去があることで、以下のようにもう一つの厳しい評価を受けることになります。
- 🚨これまでの年金加入履歴のリセット
脱退一時金を受け取るということは、「これまで年金を払ってきた期間の記録を清算してなくす」ということを意味します。永住の審査では「長期間にわたり日本の年金制度をしっかり支えてきたか」が厳しく見られますが、一時金を受け取ってしまうと、せっかく真面目に払ってきた実績がリセットされ、国益に合致していないと判断される原因になります。 - 🚨「日本に永住したい」という意思との矛盾
入管の審査官からすると、年金を清算して返してもらう行為は「私はもう日本の年金をもらうつもりはありません(=将来日本に住むつもりはありません)」という意思表示に他なりません。「日本にずっと住みたいから永住権が欲しい」という申請の理由と、完全に矛盾することになってしまいます。 - 🚨将来(老後)の生活が不安定になると見なされる
年金の加入期間がリセットされると、将来老後を迎えたときに日本でもらえる年金額が大幅に減ってしまいます。永住審査では「老後も日本の公共の負担にならず、自立して生きていけるか」が見られるため、年金が少ないと判断されれば、「どうやって老後の生活を成り立たせるのか」という将来の計画を、非常に厳しく問われることになります。
上記の内容を踏まえて、この記事でお伝えしたいことをまとめます。
<まとめ>
目の前のまとまったお金(一時金)はとても魅力的に見えるかもしれません。しかし、持っているビザ(在留資格)を返納して「単純出国」し、それを受け取ることで、これまでに築き上げてきた「日本での居住実績」と「永住権への近道」を全て手放すことになってしまいますので、将来的に永住申請を考えている場合は十分注意してください。


