母国での昔の交通違反や罰金刑の申告について
海外から優秀な人材を日本の会社へ迎え入れるため、入管へ「在留資格認定証明書(COE)」の交付申請を行う際、申請書の記入欄の中でご本人や企業の担当者が特に扱いに悩むのが、「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無(日本国外におけるものを含む。)※交通違反等による処分を含む。」という項目です。
例えば、「3年前に母国で飲酒運転をしてしまい、罰金刑を受けたことがある。しかし、現地の法律ではすでに一定期間が経過して刑の効力が消滅しており、母国の公的機関から取り寄せる犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)からは記録が綺麗に削除されている」といった場合、日本のビザ申請書には「無」と書いてしまっても問題ないのでしょうか。
今回は、母国で記録が消えている過去の犯罪歴や交通違反をどう申告すべきか、実務上の判断基準と注意点について以下の5つの項目で解説します。
- 母国では既に記録が消去されていても、申請書では「有」とするべきか
- 何年前までの記録を書く必要があるのか?
- 「無」と書いて隠すのが危険な理由
- 正直な申告と「反省文・理由書」の添付
- まとめ
まず、母国で記録上は消えている過去の犯罪歴や交通違反を申請書でどう扱うべきかについてご説明します。
<母国では既に記録が消去されていても、申請書では「有」とするべきか>
国によっては、軽微な犯罪や罰金刑の場合は、執行から数年が経過すると社会復帰の観点から公的な犯罪証明書から記録が削除されたり、刑の効力そのものが消滅したりする法制度があります。
しかし、結論から申し上げますと、たとえ母国の犯罪証明書から記録が消えていたとしても、日本のビザ申請書には「有」と正直に記載しなければなりません。
日本の入管が申請書で問うているのは、「現在、母国の公的な証明書に犯罪歴が記載されているかどうか」という現在のステータスではなく、「過去の生涯において、犯罪や交通違反を理由に処分(罰金等)を受けた事実が一度でもあったかどうか」という客観的な事実そのものだからです。証明書の表面上から文字が消えていたとしても、過去に処分を受けた事実そのものが消滅するわけではないため、実務上は「有」として申告するのが正しい対応となります。
どこまで遡って申告しなければならないのでしょうか。以下でご説明します。「
<何年前までの記録を書く必要があるのか?>
では、どこまで古い履歴について「有」として申告すべきなのでしょうか。
この点について、入管の申請書やガイドラインには「過去何年以内のものだけを記載すればよい」といった期間の制限や時効は一切示されていません。
したがって、何年前のことであろうと、ご本人の記憶や確認ができる範囲における「生涯のすべての処分歴」を申告するのが実務上の大原則となります。
「有」と申告すべきところを「無」と申告した場合、どういった事態がありうるのでしょうか。以下でそのご説明をします。
<「無」と書いて隠すのが危険な理由>
母国の無犯罪証明書に載っていないのだから、申請書に「無」と書いてしまっても入管にはバレないのではないか、という考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実務の視点から言えば、過去の事実を隠す行為はNGです。
何らかのきっかけ(後々の情報開示や、将来における別案件での照会、国際的な情報共有など)で過去の罰金刑や処分の事実が入管に知られた場合、単なる「過去の交通違反」ではなく、「入管に対して嘘をついた(虚偽申告・虚偽報告)」という極めて重大な行為として判断され、以下のようなリスクが考えられます。
- 🚨ビザが不許可になる、または後から取消される強力なリスク
- 🚨将来、日本での「永住許可」や「帰化(日本国籍の取得)」を申請する際、過去の虚偽申告が判明していつまでも許可が出なくなるリスク
このように、入管へ虚偽の報告をするリスクは、正直に申告するリスクの何十倍も大きくなります。
過去の犯罪歴や交通違反「有」の場合、申請の許可のためにどのようなことが必要でしょうか。以下でそのご説明をします。
<正直な申告と「反省文・理由書」の添付>
過去に飲酒運転などの違反や罰金刑があったとしても、「有」と書いたら絶対に日本へのビザが出ない(即不許可になる)というわけではありません。
実務上で最も推奨され、許可を引き出すための正しい対応フローは以下の通りです。
- 📌申請書の「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無」欄は「有」と記載する。
- 📌違反の具体的な内容(時期、場所、処分の内容、罰金の金額など)を正確に書く。詳細な「理由書」や「反省文(顛末書)」を添付する。なぜそのような違反を犯してしまったのかという経緯と反省
- 📌処罰や罰金の支払いがすでに完全に完了していること
- 📌その後は現在に至るまで一切違法行為を行っていない実績
- 📌日本へ入国後、日本の法律や交通規則を絶対に遵守し、二度と違反をしないという強い誓約
- 📌本国での過去履歴は既に消えていること
💡「過去に過ちはあったが、すでに罪を償って十分に反省しており、入管に対しても一切の隠し事なく誠実に報告している」という態度を書類で示すことが、審査官からの信用を維持し、許可を獲得するためにはとても大切になります。
以上の内容を踏まえて、この記事でお伝えしたいことをまとめます。
<まとめ>
ビザ申請は、入管と申請者(および受け入れ企業)との信頼関係で成り立っています。母国の制度で記録が消えているからといって自己判断で事実を伏せるのではなく、日本の入管ルールに則って正確・誠実に情報を開示することが、確実なビザ取得への一番大切なポイントです。


